第13章 再会
ショウちゃんとアオネさんは、今頃港にいるだろうか。
まさかこの街で再会出来るとは、夢にも思わなかった。
コージーも心なしか、顔に少しだけ生気が戻った。
オレは最後まで迷った挙句、ショウちゃんに大切なことを伝えられていない。
ナツちゃんとお母さんが、死んでいることを。
ショウちゃんはきっと知らない。
だって、アオネさんがショウちゃんの腕を引いて走って行くのをオレは見ていたし、ショウちゃんの家の2階から飛び降りたお母さんとナツちゃんを、お父さんの側まで持って行ったのはオレだから。
オレは、地獄の中、彷徨っていた。
熱風に煽られながら歩いていると言うのに、身体のどこも火傷を負わなかった。瓦礫の下敷きにならなかった。
そんな自分が怖くて、ずっと抜け出せなかった。
抜け出したら真実を知りそうで、怖かった。
無常にもオレは外に出てしまい、遠目で子供の背中を見つけた。
見覚えのある背格好。コージーだとすぐにわかった。
でも声をかけられなかった。
オレが声をかけて聞こえるところまで行く前に、コージーの目の前に赤いローブが立っていた。
幸か不幸か、オレは2人の会話が聞こえるところにいた。
赤いローブの男はオレに気づいた様子もなく、コージーに話しかけた。
「君は自分の家族も友人も捨てて、1人無傷でここに逃げてきた。随分自分に素直だ。それに強か。君、俺の仲間にならないか? さすれば、美味しいご飯とあったかいお布団と綺麗な服を君に与えよう」
頭にツノが2本ある。明らかに魔王側の男だ。
コージーは一瞬、男の甘言に肩を震わせたように見えたが、返事はほぼ即答だった。
「いやだ! それに家族はみんな死んだんだ! お前たちのせいで! 家の下敷きになって!」
男が「面白くない」と言った直後、彼の右手が振られ、コージーが悲痛な叫び声を上げた。
「コージー!」
俺は堪らず飛び出して、コージーに抱きついた。
コージーはぐったりしていて、オレと一緒に地面に崩れるように座りこむ。
男は不敵な笑みを湛え、
「体の内側から細胞を焼き殺す呪いだ。これ以上の身体的成長は望めないね。解呪するには俺を殺すしかないよ」
そう言って消えて行った。
オレには男を殺す術がない。
でも、ショウちゃんならきっと……。