第11章 7日間
「も、戻りましたー!!」
息を切らしたフタクチが、ヒナタと彼の剣を持ったまま、鉄製の扉を開けた勢いで倒れた。
「ちょっ……フタクチさん……おもっ……」
フタクチの体の下から、年若い少年の声が聞こえる。
ここは伊達街の地下シェルター。ある組織のアジトだ。
ここの組長であるモニワさんが、2人に声をかける。
「おいおいフタクチ。お前の下敷きにされたら誰も動けないから。ほら、早く立て」
薄暗いシェルターの入り口には灯りがない。だからモニワさんはランタンを片手に持っている。
空いている方の手でフタクチを引き上げ、ヒナタを助け起こす。
「大丈夫か?歩けるか?」
「ひゃい……」
ヒナタはモニワさんにおんぶされ、アリの巣のようなシェルターを歩く。フタクチは千鳥足で2人について行った。
モニワさんは1つの木の扉の前で止まり、3回ノックして入室する。
「アオネ!この子で間違いないな?」
俺は作業の手を止めて頷く。
「……あおね?」
モニワさんの背中でぐったりしているヒナタが顔を上げ、俺と目が合った。
その瞬間、ヒナタは目と口を大きく開けて驚いた。
「アオネさん!無事だったんだ!生きてた!」
勝手に殺さないでくれ。
ヒナタは感極まって、モニワさんの背中で小刻みに震えている。
「良かった、よかった、よかったよお……」
ヒナタはそのまま寝た。
「ありゃ、寝ちゃった?」
「何でだよ!」
モニワさんは苦笑い。フタクチは近くの長椅子に横になった。ヒナタの剣は壁に立てかけてある。
俺は長椅子にクッションをいくつか置いて、その上からシーツをかけた簡易ベッドにヒナタを寝かせる。
その安心したような寝顔は、いつぶりだろうか。
「アオネ。カマチたちも呼んでくるね。フタクチは暫く寝るといいよ。お疲れ様」
「うぃーす」
モニワさんは静かに部屋を出た。
フタクチの寝息もすぐに聞こえてきた。
“治療”を始めるのは、目が覚めてからだな。