第3章 お菓子より甘いもの*紫原*
紫原「ちん?何されてたの?」
「....何もされてないよ」
目を逸らして、彼の隣を横切ろうとすると腕を掴まれて止められた。
「...何?」
紫原「なんで嘘つくの?見てたよさっきの。」
ゆっくりと私の前に体を移動させて、私を見下ろした。
その視線を感じた私は、少し躊躇ったが事の全てを話した。
「女の子ってほんと怖いよね...でも、私...っ」
言いかけた途端、視界が紫原によって真っ暗になった。
「ど、どうしたの?!」
紫原「ちんはお菓子くれるいい人なのに....」
ぎゅうっと抱きしめる腕に力がこもる。私はその状況に頬が熱くなる。
だけどそれと同時に、私はお菓子をくれる人と認識されていた事がわかり胸が苦しくなった。
紫原「でも...お菓子くれなくてもちんの事好きだよ~」
照れ隠しなのかなんなのか分からないけど、いつものような気だるい言い方で思いを伝えてくれた。
「嘘...」
紫原「嘘じゃないよ~こんなこと嘘で言えないもん」
「...ふ...うわ~ん...」(泣)
紫原「ちょ、泣かないでよ~」
そう言うと紫原は背中に回していた手を後頭部に当て、優しく撫でた。
私はそんな紫原に甘えるように裾を掴み彼の胸に顔をうずめた。
紫原「これからは、俺がそばにいてあげる」
彼はそう言って私の頬を大きな手で包み込むと優しくキスをした。
そのキスは、どんなお菓子よりも甘くて溶けそうだった。
end