第3章 ゆっくり近づいていく恋
カフェラテは好きじゃない。
飲めないわけじゃないけれど、苦いから苦手だ。
じゃあ甘いドリンクを頼めばいいだけの話なのだけれど、おおくらさんにラテアートをしてほしくて、ついつい毎回頼んでしまう。
ホントは生クリームを追加して、お砂糖を入れて、ぐるぐる混ぜて甘々のラテを飲みたい。(もはやラテじゃないとか言わないで)
けれど、ラテアートを崩したくもないのだ。
背伸びをした恋だなぁと 自分でも思う。
*
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
「ホットの、ラテの、トール。イートインでお願いします」
今日は珍しくおおくらさんがいない。ブラックのエプロンをした店員さんに「お持ちしますので、お席でお待ちください」と言われて角の1人用ソファ席へ向かう。
しばらく待つと、トレイを片手にエプロンを外したおおくらさん。
「お待たせしました」と私の前にトレイを置き、今日は店内なんですね、と小さく笑う。
!!!
「ぼく今から休憩なんで、隣の席座らしてもーてもいいですか?」
こくこく
頭を振って肯定するのがやっとで。
今日は新入生説明会だから学校は午後からなんです。とか、いつも可愛いラテアート見るの楽しみです!とか話したいことはいっぱいあるのに、私の目線はカップに釘付けだ。
はじめて書かれたハートのラテアート、カップに挟まれたメモには、ずっと見てました。の文字。
隣には赤い顔した大好きなおおくらさん。
ドキドキがすごくて、手が震える。
嬉し涙が滲んじゃう。
ドキドキが、聞こえちゃう。
好きが、溢れちゃう。
苦手なラテを飲み切ったら伝えよう。
好きです と 私もずっと、見てました
♡
「なんだかんだで協力してくれる横山くんが好きやで!」
「うるさい集中せぇ」
end.