第2章 あと一歩進みたい恋
隣のクラスの渋谷くんに告白されて、付き合い始めて1ヶ月。
早く終わったほうが靴箱で待ってようね。と決めたルールにも慣れてきたころ、お弁当を食べながら唐突に桃子ちゃんが言った。
「お互い、なんて呼び合ってんのー?」
へ?
「やっぱり 八子、すばるくん?あ、それともすばる??」
え?
「すーくん?すばちゃん?」
あれ?
「ん?八子〜?」
「いや、渋谷くん…」
「えっ!!」
「と、関西さん…」
「えぇぇー…!!…ないわ。」
!!
「やっぱり、ない かな」
「毎日、手つないで帰るよね。」
「う ん」
「キスとか」
「…したこと、ある…けど」
いつも ぜんぶ しぶたにくんからで
「手つないでキスもして、お互い苗字呼びは珍しいと思うなぁ、うん。」
やっぱり気になる、よね?
実は薄々感じてた。
名前で呼び合えるタイミングって、いつ?
「はぁ?そんなもん好きんなった日ぃからや、んなもん。」
隣の席の村上くん、全く参考になりません。
「付き合うた日からかなぁー。タイミングみて名前で呼び合いたいよなぁ」
わぁわぁナナメ前の横山くん、そのタイミングを逃してしまったんです。
「てか 関西、頑張れよ。すばる意外とそーゆーの気にする細かいタイプやねん。」
アドバイスありがとう、村上くん。
お付き合い1ヶ月記念日。
まだ 心の距離感は 「渋谷くん」「関西さん」の まま。
*
「関西さんが好きや。入学式で、一目惚れ してもうて。あの あんまし喋ったことないけど 付き合うてくれへんかな」
お願いしますの返事に、ぎゅうって力入れたにぎりこぶしを口に当てて、くすくす「やった!」と笑う彼を可愛いと思った1日め。
「て、つなぎたいんやけど 」
男の子にしては華奢な渋谷くんの手が、意外とごつごつしてると知って 指をからめながらドキドキした3日め。
「ちゅー してもええ?」
(ふはは、目ぇ綴じて。さすがに恥ずかしい。)って照れた渋谷くんの吐息をくちびるに感じた12日め。