第1章 見つめるだけで幸せな恋
「あぁぁー今日もめっちゃ可愛かったピンクレディーちゃん♡髪の毛やわらかそう!お肌すべすべそう!なでたいなでたいさわりたい!」
「欲望丸出しやな!でもまずは話しかけるとこからやん。そこから始まるんやん全ては!」
満足そうに窓際に背を向けて並んでもたれかかる、いつもの朝。でもな、もうちょい彼女のこと見とったほうがええんちゃう??
逆方向に向かう電車、ガラス2枚隔てたむこうがわ。毎日おんなじようにピンクレディーちゃんが背を向けて立ってるんですよ、しょーたくん。
気づけ!今日こそ気づいたれ!と隣に念を送るも、脳内お花畑な彼に届くはずもなく。ゆっくりと逆方向に動き出した電車に、ふと目をやれば
くるり。
!!!
やっさんのほうに少しだけ振り返って、小さく動いた彼女のくちびる。
それはほんとに一瞬の出来事で。
ふんわり笑った彼女を乗せて、電車はぐんぐんスピードをあげていった。
「そやなー…話しかけるかー…んー、あのピンクのつやつやうるうるしたくちびるで「すき♡」なんて言われたらもうボク心臓止まるかもしれへん!どおしよー」
ばかばかばかばか!早くきづいたげて!
もうもうもう!ふたりとももどかしいんやから!
そんな気持ちを心に秘めて
「んはは!ほんならもう止まりかけやな。俺も好きなひと欲しー!!」
今日もぼくは、彼の恋愛を見守るのです。
end.