第1章 見つめるだけで幸せな恋
「きっ⋯⋯た!きたきたきた!!ちょぉ見て!早く!おーくら!ねぇ!」
「もー なにぃ?朝からやっさん声でかいぃ」
「あぁ行ってまう!ほらあの!ぴんくのねこちゃんトート!」
そう言って親友が見つめるのは、向かいのホームの(彼いわく)ピンクレディー
(カバンも小物もピンクが多いから♡て、なんやねんピンクレディーて。ミーちゃんかケイちゃんか!)
「毎朝毎朝あきへんね」
「そらもう、ね。好きになってもーたんやもん。あぁぁ今日も可愛いぃ♡」
隣でジタジタ落ち着きなく彼女の好きなとこを語るのに相槌を打つのも、もう慣れた。
(わかったから そんな腕ガクガクせんといてー)
「名前とかさ、聞いたりしやへんの?」
「えぇぇ…おしゃべりするってことぉ?無理!まだ無理!」
おしゃべりって何やねん子供か!
まだって何やねん無欲か!
「ほんなら僕が…「それはいいわ自分でいくから!」
そんなとこだけオトコか!!
「まだ、いいねん。片想い特有のドキドキする気持ち、好きやから」
「まぁ、わからんでも ないけど」
わからんでもないけど気づいてる?
やっさんがニヤニヤぼくに惚けてるあいだに、彼女もちらちら赤い顔でこっち見てること。
ぴんくのねこちゃんトートを持ちだしたんは、やっさんがピンクのコンバース履くようになってからってこと
いつの間にか彼女の履いてたローファーがブルーのコンバースになったんは、やっさんのリュックがブルーやからとちゃうかな、なんて。
(きっと、うん、絶対そうやんコレはもう。)