第7章 好きな人には妥協できない恋
立てばキムタク
座ればヒガシ
歩く姿は光GENJI
⋯とまで言われた錦戸亮が、一人の後輩に夢中になっていると噂が流れ始めたのは、先月末の話。
「八子ちゃん、めっちゃ好きやで」
「私も好きですよ♡ニシキド先輩」
「ほんなら、さ、そろそろ付き合わへん?」
1年E組 関西八子
今日も学校中の女子の鋭い視線を受け、笑顔でいつもの一言を返す。
「絶対いやです」
「な、なんでなんで?なんでぇ〜?」
「ひみつです」
「そんなんどこが悪いかもわからへんやん〜!」
「はぁ⋯♡」
「なにさっきの可愛い!もっかいして!」
「いやです」
「う⋯今日も絶妙の冷たさやね八子ちゃん⋯」
*
「なんで?なんで付き合ってくれへんのやと思う?」
なんで無口なすばるくんと脳内お花畑なヤスに彼女がおって、100人斬りの異名を持つ俺に彼女ができへんの?!
「だだ漏れや。だだ漏れや頭んナカ。失礼やな」
「なんでやろねぇ〜、亮、いけめんすぎるんとちゃう?」
「それや。変顔で告白せぇ。変顔でキメろ」
なーるーほーどー
「いや無理やしメンタルそこまで強ないし」
「おもんな。しょーもなほんま」
「そろそろ僕かのじょ迎えにいくねぇ〜」
「ん。章ちゃんほなね、また明日ね」
僕の恋は、前途多難です。
*
事件です。
八子ちゃんの親友に有力情報を聞き出すことに成功いたしました。
な
ん
と
!
「八子、すごく錦野徹朗さんが好きで⋯だから錦戸先輩、似てるじゃないですか。錦野さんの代わりみたいとか、意識しすぎて⋯好きって言えないんじゃないかなって⋯」
キターーーーー‼
これはまぁもう行くしかないでしょう!
八子ちゃん、ごめん今まで、気づいたれへんくて!!!
「あぁぁ⋯ばれちゃいましたか⋯」
「そんなん別に八子ちゃんが気にする事っちゃうで?俺が錦野に似てても⋯」
「あの歌、すっごい共感するんです♡」
へ??
「俺 for ALL♡私の歌みたいです♡」
えっ?えっ?
「みんなは私のため!私は私のため!えへへ♡」
なにこの子!むちゃ可愛い顔で信じられへん事ゆうた!
「ニシキド先輩、えすですか?」
ややや、こんな可愛い子がえすとかゆうたらあかん!
「私も、好きな人にえすなんで♡」