第6章 待って待って待ち焦がれる恋
バイト入りすぎて彼氏に振られたー!あんな男願い下げ!なんて愚痴を聞いた時には、コーヒー馬鹿って八子さんのコトゆうんやね、なんて茶化したりして。
自分の気持ちに気づいた途端に留学やなんて、俺はどうすればええの?
「ローマでね、エスプレッソの勉強したいの」
「いつか自分で独立したくて」
「向こうの人、舌肥えてそうで怖いなぁ」
「でも、わくわくする!ブラックエプロンの勉強してた時みたいにヤル気みなぎってる!!」
なぁ
嘘やろ
行くなよ
寂しいやん
行かんといて
まだ俺、なんも
なんも伝えてない
伝えんの?
彼女がこんなにも焦がれとる世界に行くなよって?
好きやで
付き合って
さみしい
そばにおって
彼女の気持ちは?
しがないバイトやのに?
自分の感情ぶつけるだけ?
ぐるぐるぐるぐる
お荷物やん。完璧。
⋯なさけな⋯。
言えるわけない、好きや、なんて。
「⋯手紙、ください」
が、あの時の俺の、精一杯。
「いっぱい書くよ。返事もしっかりちょうだいよー?」
「いや返事しません英語苦手なんで」
精一杯の俺の強がりを笑い飛ばして、彼女は行ってしまった。
*
「大倉、明日、休み代わって」
「別にええけど⋯あ、噂の?」
伝説のせんぱいや!きゃー!よこやまくん遂にいくんやー♡なんて盛り上がる横で決意を決める。
八子さん、次は絶対逃がさへんから。
まずは、あなたを想って勉強したブラックエプロン姿、褒めてくださいね。
こんな店長のおる店舗でよければ、復帰待ってます。
(よこは白いから黒いの似合うね♡)(いや、ほら、なんか もーちょいこう⋯)
end.