第8章 我らがエリザベート(滝/数多)
めいこ「あたしが出ていくのは何だか野暮なような気がして...」
跡部との試合で、相手の部長である手塚は肩や肘の怪我が悪化してしまった。
きっと向こうもこういうものを持っているだろうが、気持ちの上で何かしたいと思ったのだった。
滝「...そう、分かった」
滝は心情を悟ってか優しく微笑むと、めいこから渡された物を持って、足早にコートの中へ入っていった。
さっき歩き回ってたときはあまり感じなかったけど、試合中のコートってすごくピリピリして、熱いものがほとばしってて、神聖な場所なんだなぁ。
とてもじゃないけど入れないわ。
そう、あたしは黒子のように馬に徹する方がいいわ、うん。
っていうかそれより、このさっきからドキドキしてるのって何?!
ぶちょーの試合あたりからずっとドキドキしてて...なんで?!
2人とも格好良くて胸熱になったからかな、それとも熱中症かなあたし。
うーん、とりあえずさっきもらったやつ飲んどくか!
小さいポーチからバンダナ少年にもらったペットボトルを取り出すと、まだ結構凍っており、ゴクゴク飲める感じではなかった。
じゃあもう1本の、炭酸pontaでも飲むかーと、キャップをひねった。
滝「めいさん、渡してき...」
ブッシャアアアアア!!
めいこ「パヤァアアアー!」
滝「わー!何やってるのさもう!」
めいこが開けた炭酸水が、飲もうとしたお面の中で噴き出し、神聖なコートに奇声が響き渡った。
多くの面々が声の方に一斉に振り向く。
その声を聞いた跡部は、額に手を当てて呆れながらも少し笑っていた。
鳳「何ですか?!」
宍戸「あぁ?」
芥川「パヤア?」
忍足「あ、馬おった」
向日「だろ?!跡部の馬」
視線の先には、滝に慌ててお面を引っ剥がされ、首にかかっていたタオルで顔を丁寧にふいてもらっているめいこがいた。
向日「って和栗かよ!」
忍足「やっぱり嬢ちゃんやったか。そりゃほんまモンの馬おるわけ無いわな」
跡部「ま、俺様のエリザベートというのはあながち間違っちゃいねーがな」
日吉「それは聞き捨てなりませんね、せめて俺達のと言って頂きたいですよ」
そう言うと、日吉はコート内に入っていった。
跡部「フンッ、言うじゃねーの」