第6章 振り回される(日吉/跡部)
今日は大事なテニスの試合です。ちょっと遠いですが、今のところ間違えずに乗り換えできています。
ただ、数10円ケチって遠回りしたのが間違いだった。
めいこ「この乗り換え、改札の外だったんか...」
ガラケーで乗り換え案内を調べながら進んでいためいこだったが、次は駅から徒歩6分と書いてあることに今気がついた。
めいこ「やばいサッパリ分からん」
改札を出て、周りを見ても地図らしきものが無い。
けれどラッシュ時特有の、学生と社会人の波をみて、閃いた。
この流れに沿って行けば着けるんじゃね?
絶対間違いないよこの早足。
皆乗り換えの駅に向かってるんだよ!
そう思い込んで「あたしよくここ使ってるから」的、変な見栄を出しためいこは、流れるままに歩き出した。
「ちょっと待て」
めいこ「おわっ!」
数歩進んだところで、突然後ろから右腕を掴まれたのだった。
見上げると、怪訝そうな顔をした人物が立っていた。
日吉「お前、和栗だよな?」
めいこ「う、うん?びっくりした日吉君か、おはよー」
日吉「おはよう。今何処行くつもりだったんだ?」
めいこ「え、乗り換え」
日吉「だろうと思った。そっちじゃない、真逆だ」
めいこ「フェッ!」
日吉はめいこの腕を掴んだまま、来た方向とは逆に歩き始めた。
日吉「駅員に聞くとかしなかったのか?」
めいこ「あ、そっか」
日吉「和栗....」
めいこ「人をそんな哀れな顔で見ないでー!」
日吉「俺が通りかかったからよかったものの。もう少し調べてから来い」
めいこ「はい...」
しょんぼりと下を向いてしまっためいこを見て、言葉を付け足す。
日吉「こういう時は、今度から俺と一緒に行動しろ、いいな」
めいこ「へ?」
日吉「いいな」
めいこ「あ、はい」
な、なんかこういうとこぶちょーと似てるなぁ。
無事乗り換えの駅に着くと、電車が来るまでベンチに座った。
日吉はスマホを取り出す。
日吉「これは俺の連絡先だ、登録しておけ」
そう言ってスマホのアドレス画面を見せられる。
めいこ「今?!」
日吉「今だ」