第29章 付いてくならトコトン(跡部/千石)
めいこは慌てて彼の腕を引っ張って、近くの水道まで走った。
勢いよく水を出すと、千石の手を冷やす。
千石「うぅう、面目ない」
めいこ「気をつけて下さいね、もう。真夏のアスファルトって目玉焼きも焼けちゃうくらい熱いんですから」
千石「そんなになの?!」
何秒かの沈黙のせいで、水の流れる音と、蝉の声がやけに大きく聴こえる。
千石は「ありがと、もう平気みたい」と言って蛇口を止めると、首をポリポリとかきながら、話題を切り出した。
千石「…あのさ…俺とまたカップルのフリ、してみるってのはどう?」
めいこ「えっ?!何のために?!」
千石「だって、付き合ってるの隠してるんでしょ?だったら、俺がカモフラージュになったらバレにくいかなって」
めいこ「確かに…ってキヨ先輩はそれでいいんですか?!」
千石「何で?カモフラージュしてる間に俺の方がやっぱり良いってなったら、乗り換えてくれて構わないんだけど?」
ニカッと笑ったその顔は、どこか自信満々なように見えた。
めいこ「えええ!?」
千石「ね?お互い損しないでしょ?ってことで決まりっ!」
めいこ「いやいや絶対ぶちょー怒る!」
千石「ダイジョブだってぇー!この千石にお任せあれっ!」
めいこ「不安だー!」
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跡部「却下だ」
千石「何でぇ?!名案だと思うんだけど!」
カモフラージュの話しをしたら、即答であった。
今私達は、ぶちょー、あたし、千石の横並びで帰路を歩いている。
先程千石が、テニスコートで帰り支度をしていた跡部に向かって、「跡部くーん!一緒に帰ろー!」なんて、めいこの肩に手を置きながら言うもんだから、鬼の血相で来た跡部が入り、こんな変な組み合わせになってしまった。
跡部目当てで千石と共に来た、山吹中の女子生徒は何故か忍足や鳳の虜になっていたので、こちらは特に気にしていない様子だった。
めいこ「やっぱやめましょ、一歩間違うとさっそく二股みたいだし」
千石「えー、いいと思うんだけどなぁ」
跡部は鼻で笑う。
千石の下心など全てお見通しのようだ。
めいこ「あっ!いいこと思いついた!キヨ先輩とぶちょーが付き合ってるというカモフラージュは…」
「「却下だ」だよ」
ー【第29章 付いてくならトコトン END】ー