第28章 【番外】貴方が気にかかる(観月)
「ちょっと和栗!」
めいこ「うわびっくりしたっ!」
夏休み中のとある朝、通学路を歩いていると、突然背後から怒られた。
振り返ると、観月が眉間にシワを寄せ、腕を組んで立っている。
めいこ「えっ、え?観月先輩?おはようございます?」
観月「おはようございます、これで駆け込み乗車10回目ですよ」
めいこ「えっ?」
観月「危ないですからやめてください、まったく」
呆気に取られるめいこをかすめ、前を当然のように歩き出した。
その後ろ姿は、どう見ても我が氷帝学園の制服であった。
めいこ「どゆこと?!」
めいこの疑問には答えずに、ため息混じりに説教をしだす。
観月「遅刻ギリギリにいたっては5回、転びそうになったのが2回。マネージャーなんですからしっかりして下さい」
めいこ「え?同じ電車だったんですか?」
観月「そうですよ。氷帝の最寄り駅をいくつか過ぎた場所が、僕の学校ですからね」
めいこ「そ、そうだったんですか...全然気づかなかった」
観月「でしょうね。あなた、大抵だらしなく寝ていますし」
めいこ「う」
観月「つり革に掴まって器用に寝ているのには、逆に関心しましたけどね」
めいこ「ううう」
観月「でもあの時、痴漢にあっていたでしょう」
めいこ「そこまで知ってるんですか?!」
観月「えぇ、あなたの背後の席に座っていましたから、よく見えました」
めいこ「マジか!」
観月「あの痴漢オジサンは常習犯ですから、つり革で寝ている貴方に近づいたことに直ぐ気が付きましたよ」
めいこ「マジかーー」
観月「女性がマジかって、おやめなさい」
めいこ「ハイ」
観月「行動にうつったらその場で取り抑えようと思ったんですけど、寝ていると思ったあなたが痴漢にひと睨みしたものですから...フフフッ、驚いて逃げていきましたよね」
めいこ「う、はい」
そう、あの時は突然太ももを撫でられて、眠くてイラついていたので、「あぁ?!」ってめっちゃ睨んじゃったんだよね。
観月「なんというか、この前初めてお会いしたときは大人し目の変な子かと思いましたけど...」
めいこ「変な子...」
観月「案外、気が強いところもあるんですね」