第24章 【番外】蝉パニック!(滝)
ここは真夏の氷帝学園、屋外渡り廊下。
めいこはその天井を見上げて呆然と立ち尽くしていた。
めいこ「マジか...」
なんと地が見えないほどに張り付いた、おびただしい数の蝉がけたたましく鳴いているのだ。
耳の奥がキンキンこだまするほどに。
めいこ「ヤバい、無理すぎる」
テニスコートの隅にある、この渡り廊下の先には倉庫があり、そこからテニス部予備の道具を取りに来たのだが、蝉があまり得意ではないめいこは、そこから一歩も動く気にならなかった。
苦手になってしまったのには理由がある。
1つは幼い頃、叔母に「手を出してみて」と言われて素直に両手を出すと、何かをギュッと握らされて、開けてみたら蝉が「ビビビビ!」と大きな音で飛び出してきて酷く驚いたこと。
もう1つは、オッサンのように新聞を読みながらマンションの廊下を歩いていたら、うっかり下にいた蝉さんを踏んでしまったこと。
以前は落ち葉をパリパリと踏むのが大好きだったのだが、そのたびに蝉を思い出してしまい、あまりやらなくなってしまった。
滝「どうしたの?」
遠目から見ていた滝は、足を止めためいこを不思議に思ってこちらへやって来た。
めいこ「滝さん!蝉がめっちゃやばい!」
滝「蝉...?」
滝は天井を見上げてその光景を目のあたりにすると、顔を強張らせた。
滝「お、恐ろしいくらいにいるね...どうりで煩いわけだよ」
めいこ「でしょ?!やばいですよねこの数!」
滝「そっとしておけばどうってことないよ、戻ろう」
めいこ「いやいやいや、あたし向こう側の部品取りに来たんですて!」
めいこは群生する奥の扉を指差す。
滝「...やめときなよ」
滝も蝉が得意ではないと悟っためいこは、仕方なく落ちている枝を掴むと、天井に向かって投げた。
めいこ「せいっ」
滝「ちょっ!」
しかし蝉を驚かせるどころか、あらぬ方向へ飛んでいった枝は、乾いた音を立てて地面に落ちた。
蝉はびくともしない。
めいこ「駄目か...」
滝「びっくりした、飛んでくるかと思った」
めいこ「仕方ない、確なる上は...ちょっと失礼」
めいこは滝の背後に回り込むと、ユニフォームの上着を持ち上げて中に入った。
滝「何してるのさ?!」