第3章 終業式の後に(芥川/跡部)
芥川「これで和栗もカンニングだね!」
めいこ「っあ!ずるい!」
芥川「EーじゃんEーじゃん!コレ借りてきたから早く行こーぜ!」
顔の横まで上げた手には、鍵がぶら下がっていた。
それは後であたしが借りに行こうと思っていたもの。
めいこ「え、あ、ありがとうございます」
芥川「ほら、それさっさと提出して行こ行こ!」
芥川は机に乗っている筆記用具をめいこの鞄に適当にポンポン詰め込むと、強引に腕を引いて教室を出た。
思いの外強い力で引っ張られ、やっぱり男の子なんだなぁと少しドキドキする。
そしてこの強引さもどこか楽しくて、走りながら顔をほころばせた。
その頃跡部は夏休み中に借りる本を図書館で選んでいた。
ふと腕時計をみる。
そろそろ芥川と和栗の補習授業も終わっている頃のハズだ。
あいつが寝てなければ、の話だが。
めぼしい本を数冊脇に抱え、残りの本を通路を進みながら戻していく。
そのまま貸出窓口で借りると、隣の校舎へ向かった。
1階から連絡通路のある、2階へ移動している途中の踊り場には光が差し込み、蝉がけたたましく鳴いていた。
今日も暑い。
35度を超えると予報が出ていたため、野外のテニス部は自由参加になった。
自分はこの後どうしたものかと考える。
芥川「あ、跡部ー!」
めいこはその名前を聞いてドキッっとする。
ちょうど跡部が階段を登ってきたところだった。
芥川「おつかれー!」
めいこ「お疲れ様です」
跡部「あーん?おい和栗まで何処行..」
そんな声も届かず、走って行ってしまった。
跡部はしばらく考えた後、そのまま2人を追った。
校舎を出て部室棟を抜け、2人が向かった場所はその奥にある大きな建物。
先生から借りた鍵でドアを開けると2階へ登り、更衣室も通り過ぎて大きなドアを開ける。
それぞれ鞄を放り出し、芥川は思いきり走ってジャンプする。
芥川「ひゃっほーう!俺イッチバーン!」
めいこ「あーっ!待ってくださいよ先輩!」
直後、ザパァンと大きな音と水しぶきが上がった。
芥川とめいこは、制服のままプールに飛び込んでいた。
顔を見合わせ大笑いする。
そう、ここは学園内の室内プール。
鍵を先生から借りれば休日は生徒に開放していた。