第2章 匂いフェチ(跡部/忍足)
今は放課後。
ここはテニス部室2階にある、マネージャー室。跡部はそのドアをノックした。
跡部「オイ和栗、いるか?」
めいこ「はーい?」
跡部「入るぞ」
めいこ「どうぞー」
中へ入るとめいこはベンチで洗濯物を畳んでいた。
めいこ「お疲れ様です」
跡部「あぁ、お疲れ」
挨拶のときにチラッと跡部をみたが、直ぐに洗濯物に視線を戻した。
跡部は持ってきた紙袋をベンチの端に置く。
跡部「昨日借りた予備のユニフォームとタオルだ。洗ってある。ありがとよ」
めいこ「あ、はい」
跡部「それと、お前が真似したあの技だが..」
顔をグイッと近づけ、小声で話し始める。めいこは思わずたじろいだ。
跡部「まだ未完成の技だ。言いふらすなよ」
めいこ「は、はい、了解しました」
跡部「フッ、いい返事だ」
それだけ言うと、跡部は直ぐに出ていってしまった。
めいこ「コレ、ぶちょーが洗ったのかな?なんか、手洗いしてるとことか想像できないんだけど...ふふっ」
紙袋から畳まれた洋服を取り出すと、フワッとほのかに香りがした。
めいこ「わーいい匂いー」
何だろう?薔薇?...と、甘い匂い。ハチミツみたいな。うーん、何だろう?
一生懸命考えてる内に、めいこは無意識に鼻を埋めていた。
そこへ、誰かがノックもせずにガチャリとドアを開けた。
忍足「なぁ、ここに跡部おる?」
めいこ「いっ?!」
洗濯物から慌てて顔を上げる。
数秒、無言のまま2人は見つめ合っていた。
忍足「ほー?ほんほんほん」
丸眼鏡がギラリ反射し、ニヤリと笑った忍足がジリジリと近づいてくる。
危険を感じためいこは、とっさに体の後ろにさっきのユニフォームを隠した。
忍足「何やお嬢ちゃん匂いフェチだったんかいな、マニアックやなぁ」
めいこ「あ、えっと!」
冷や汗出しまくりながら言い訳をグルグル考える。
忍足「ふん、確かに新しい洗剤ええ匂いやわぁ」
そう言って、畳んであるタオルに鼻を近づけた。
めいこ「そそそーなんですよ!向日先輩と忍足先輩が選んでくれた洗剤コンビがとってもいいんですよ!匂いフェチではないんですけどついつい!」
忍足「さすが俺やんなぁ」