第7章 両手に花
わたしは保健室内で縮こまっていた。
理由はわたしの方をじっと見続けている聖くん。
それも、無言で。
わたしもわたしで初手として無視を決め込んでしまったために、
「…………」
かれこれ数十分ほどこの膠着状態が続いている。
そろそろ視線が痛い……。
というか、怖い。
わたしは覚悟を決めた。
「え、えっと……聖、くん?」
聖くんと目が合い、ぎこちない笑みを浮かべる。
「今日はどうしたの、かな……?」
「……放課後だから、時間潰しだ。どうせ先生は部活の連中が終わるまでここにいるんだろう?」
わたしはこくんと首を縦に振る。
聖くんは目線を鋭くした。
「ちょっと先生とお話がしたくて、な」
わたしは心の中で悲鳴をあげた。
まさに蛇に睨まれた蛙、と独り言ちる。
もしかして学園長に報告したのだろうか、と冷や汗をかいていると
「時雨先生は?」
「今日は出張です……」
聖くんはそこでふいっと目を逸らした。
「そう、か」
心做しか頬が赤い気がする。
聖くんがわたしの視線に気づく。
「なんだ」
「いえ、別に……」
また沈黙が落ちる。
気まずい……。
ふうっと溜息を漏らしかけた時、
「おい」
「ぅはいッ!?」
突然声をかけられ、椅子から転げ落ちそうになった。