第34章 金を掴む者は人を見ず
「聖くん、もしかして今来たんですか?遅刻なんて珍しいですね」
「……まあ、ちょっと」
要領を得ない返答にわたしは内心更に首を捻る。
「何かあったんですか?」
重ねて尋ねると、聖くんはふうっと気だるげに息を吐く。
心配そうに見つめていると、今度はさして口ごもる様子もなく、
「痴漢」
サラリと答えた。
わたしは聖くんと対照的に目を見開く。
「えええっ!」
「そんなに驚くことでもないだろ、よくある話だし。駅員にきっちり突き出してきたよ」
事も無げに言う聖くん。
わたしは面食らい、返答に迷う。
「そ……それは、そうかも、しれませんけど、でも……」
聖くんの表情を窺っていると、涼やかな表情が曇った。