第31章 猫に鰹節
斗真先生は口を噛み締め、
「……あッ!」
はっと顔を上げた。
斗真先生は掴んだジャージを慌てて広げる。
「そっ!そんなことよりっさっさと着替えた方がいいですよね!すみませんいつまでも見苦しい格好でっ……!」
わたしは、その手に自分の手を重ねた。
斗真先生が驚いた顔でわたしを見る。
「あ……っあの!丸木戸、先生……!」
「……そんなことないです」
わたしはうっすらと頬を染め上げて、首を横に振る。
小さく呟いた。
「全然……見苦しいなんて思いませんよ」
斗真先生は目を見開く。
わたしを驚いたように真っ直ぐに見つめ、表情を引き締めた。
「丸木戸先生、おれ……」
わたしはその瞬間、勢いよく斗真先生の手を包み込んだ。
「えっあッ!手ッ……!」
わたしはニコッと微笑み、畳み掛ける。
「もっとよく見せてくれませんか?」
「え……ッ」
斗真先生の目が困惑したように揺れて、視線はわたしの元へと戻ってくる。
その目付きは泣き出しそうなに不安定で、溶けそうな程に熱っぽい。
「ね……いいですか?」
「……はい、丸木戸先生……」
蠱惑的な震え声を唇から紡いだ。