第29章 藪をつついて蛇を出す
昼休み、わたしは保健室で昼食を取っていた。
一人でのんびりしていると、ドアが開いた。
目をやるとサヘルくんがこちらを見つめていた。
「えっと、時雨先生は……」
わたしは箸を置き、誰もいない時雨先生のデスクを見る。
苦笑いした。
「タバ……ちょっと席を外されてますね」
サヘルくんが納得したように頷く。
わたしはにこっと首を傾げた。
「時雨先生に何か用事ですか?」
「え、あ、用事っていうか……そ、相談……です」
「相談?良かったらですけど、わたしが聞きましょうか?」
「えッ」
サヘルくんは顔色を変えて後ずさった。
ブンブンと首を振り、上擦った声で否定する。
「い、いえ!大丈夫ですっ、さっ些細なことなので!」
「そうですか……」
……時雨先生にしか出来ない話なのかな。
サヘルくんを見ると、所在なさげに立っている。
わたしは女だし、言いづらい事もあるよね。
そう思い時計を見る。
昼休みは残り少ない。