第16章 犬馬の心
家族はぼくが冴舞学園の特待生から落ちてもきっと責めない。
それは優しいんじゃない、無理解だからだ。
どうせ、鬼の首でも取ったように……家の近くの愚にもつかない学校に行った方が良かった、今でも間に合う、と言うだけだ。
ぼくはやめるもんか、と独り言ちた。
最初に冴舞学園に入学した理由はなんだっけ。
多分、しょうもないものだったと思う。
……今の理由は一つだ。
「……紗都せんせい……」
その人の名前を呼ぶだけで、きゅんと心が締め付けられるようだった。
ぼくは紗都せんせい紗都せんせい、とうわ言の様に呟く。
言うだけで身体が熱くなってきて、自分でもどうかしてると思う。
「はぁ……っ」
でももう、身体が切なくて仕方がない。
自然と手が下腹部に伸びる。
腰を丸めて、むずむずと疼く下半身を服越しに弄る。
指先で軽く先端部分を掻いた。
「あぁっ、う……」
甘ったるい声が溢れてきて、思わず口を抑える。