第11章 鞍上人無く鞍下馬無し
いつも通りの朝。
保健室の前に立ち、鍵を開けようとドアに手をかけた。
「紗都せんせいっ」
後ろから声をかけられ、振り返る。
「あ、おはようサヘルくん」
「おはようございますっ、あの、これ……」
サヘルくんがわたしに向かって包みを差し出す。
「どうしたの、これ?」
訊くと、サヘルくんはぽっと頬を赤らめた。
「その……この前、紗都せんせいがぼくに首輪を着けてくれたから、これ、そのお返しです……」
「え、い、いいのに……」
わたしは若干引きつつも、プレゼントを受け取る。
貰ったそれに、
「でも嬉しいなあ」
にへっと表情を緩めた。
サヘルくんに笑顔でお礼を言う。
「家に帰ってからのお楽しみにしようかな、本当にありがとう」
「はい、それじゃあぼくは授業に行ってきますっ」
「うん、頑張ってね」
サヘルくんはぺこりと一礼し、教室へと歩いていく。
わたしは気持ち良くその後ろ姿を見送った。
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