第21章 二十一朝
マダラはオビトの半身、黒ゼツの左目に手を伸ばす。
しかし、その手は顔をしかめながら僅かに体を逸らしたオビトの体をすり抜けた。
右目の万華鏡写輪眼が光を湛える。
勢いよく後ろに飛び退けば、オビトの手はマダラの体に刺し込まれたまま伸びていった。
地面に足をつけると同時に、2人の意識はマダラの腹の奥底の部分、尾獣が眠る場所へと放り込まれる。
チャクラを繋げている分、マダラはオビトの思考が筒抜けだった。そう、この最中にもオビトの頭の中にいる少女のことも。
「カカシィ!神威でナルト達を飛ばせ!」
その呼びかけに、カカシはサクラと鎖羅、そして砂の上に倒れたナルトに瞳術を向けた。
マダラは神威使用時にはすり抜けが解かれることを知っていた。そして時空間に飛ぼうとしているオビトと、オビトの“希望”であるらしい鎖羅に向けて求道玉を飛ばす。
「ッ!」
鎖羅は歪む視界の中、求道玉もその正円を歪ませてくるのを視認する。
神威空間へ飛ばされる際、一瞬だけ意識がブラックアウトする。その一瞬、気を抜けばやられる。鎖羅にはそのゼロコンマ程度の一瞬でも長い時間に感じられ、思考が巡っていった。