第20章 二十夜
オビトはゆっくりと歩みを進める。
その足取りを何とかして引き止めなければならない。本能でそう感じたカカシと我愛羅とミナト、そして鎖羅は己が持つ忍術を繰り出す。しかし、その全てはマダラによって防がれてしまい、衝立のごとく作られた我愛羅の砂漠波が彼らの心を代弁するかのように崩れ落ちた。
忍全員がナルトを希望としていると言った。
しかし、忍全員とするならば、オビトはその中には含まれていない。
マダラはそこを見誤ったのだ。
オビトの差し出した右腕は、マダラの手を取るかと思いきや、みぞおちを突く。
……約束を思い出したよ、リン。
オレは火影になってかっこよく世界を救うところを、うちはオビトとしてリンに見せてあげるべきだったんだ。
でもずっとオレは、リンを失ってからずっと、自分に仮面を被せてオビトである事を無かったことのようにしてきた。リンから期待されてたオビトも死んだことにしてきたんだ。
「……お前、何を」
「マダラ、アンタはオレをナメすぎた。確かに世界の希望はナルトだろう。だがな、オレ自身の希望はもう道の途中で見つけたんだ。」
刺されたオビトの右腕が呼応し、チャクラが注ぎ込まれていくのを感じる。マダラは1人の少女のイメージが断続的に脳内に流れた。
「まさか……」
リン、いままでありがとう。
火影になるという約束は果たせなかったが、世界を救うという約束は果たしてみせるよ。
……もう、リンはどこからも見ていないだろうな。
でも今は、オレの姿を見てくれる人がいるんだ。
「今のオレは、うちはオビトだ!」