第18章 十八朝
「………えっ」
今まで皆の背中を捉えていたはずの視界が闇に覆われる。
目元を掴んだのは人の手。
すると身体が浮遊感に包まれる。状況が把握できない。足をばたつかせても地面はそこになく、やがて体の方向感覚は失われ自分が落ちているのか、それとも上昇しているのかも確認できない。
「鎖羅ッッ!!!」
遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
しかし、それは雨音と共にかき消され、やがて静寂に包まれた。
「うッッ!」
重力を感じたかと思えば、受け身も取れないまま地面に叩きつけられる。
この感覚、なぜだか初めてではないような気がした。
「ここは……?」
ふらふらと立ち上がり、当たりを見渡す。
四面が切り立ったオブジェのようなものが、不規則な高さでそびえ立っている。
外観こそかつての故郷と似通っているが、あまりにも無機質かつ無音すぎて懐かしさなど感じられない。
自分の呼吸がよく聞こえる。どこから聞こえるのかすらわからない地響きか、それとも体内の血の巡る音なのか。
それぐらい己に寄り添ってしまうほどの“孤独”を表した空間だ。
ゾワゾワと右腕に立つ鳥肌を宥めるように擦りながら、オブジェの上を歩き回る。
かなり広さのある、正方形だ。
辺まで行くと、声すら反響せず吸い込まれて聞こえなくなる程の奈落があった。
落ちたら恐らく戻って来れない。
自分は誰にここに連れてこられたのか、何故ここにいるのかをやっと考えられるようになった時には、後ろ手に捻りあげられ、首元にクナイを当てられていた。