第14章 雷雨
「カカシさん、……いや、師匠!私に修行をつけてください。私を……弟子にしてください!」
「師匠?!で、弟子ぃ?!」
「だめ……ですか?」
「いや、その、今まで先生っていう立場だったから、師匠呼びはむずがゆいっていうか……」
「…師匠、私は……私は!好きな人も、引き止められなかった!私が弱かったから、殴ってでも止めることすら出来なかった!」
芝生に鎖羅の涙が落ちる。
ブチブチと引っ掴んだ草がちぎれる音がする。
「強くなって生き残れば、きっと戦場で会えるはず。そしたら殴って言いたいんです!どう、して、どうし、て、って……う、うわあぁあぁん!」
カカシは声を上げて泣き出した鎖羅の肩にゆっくりを手を置く。
堰を切ったように、糸が切れたように、泣き叫ぶ。これまでの我慢を。涙すら出なかった辛い出来事を、吐き出す。
「もちろん、強くなるための手助けは惜しまないさ。でも、実践は戦場だ。アカデミーで忍の基礎を教えるのとは訳が違う。それなりに厳しくさせてもらうよ。」
「…っはい!お願いします!」
鎖羅はしゃくりあげながらも、涙をふいて笑顔を見せた。
仲間のため。好きな人のため。
いつだって忍が強くなろうとする理由は変わらないのだ。
「…あ。それと、師匠呼びはちょっとオレがそうさせてるみたいで多方面からどやされそうだから、普通にカカシ先生って呼んで?」
「分かりました!カカシ先生ですね!」
「うんうん、そうそう」
(危なかった……あいつらにバレたら中々に笑いものにされそうだからな……)
二人は軽い足取りで帰っていった。
墓前に供えられた花が、新たな門出を祝福するように揺れる。