第13章 夕立
「……ッ」
ギィン、と耳鳴りがトビを襲う。
イザナギで逃げ切ったはずの爆発が鼓膜にダメージを与えていたようだ。残響にしても、異様な痛みを伴う耳鳴りに、トビは軽く膝を抜かす。
「ちょっと、大丈夫かい?」
「…ああ。」
ザプンと水面が揺れ、一枚一枚の太い鱗が逆立った大きなナマズのような生物が顔を出す。
ギィギィと引っ掻くような鳴き声をあげると、口の中から鬼鮫の上半身が這い出た。
「無事だったようだな」
「間一髪でしたよ…、デイダラの爆発に紛れて崖から落ちましてねェ」
「それで川を上ってきたって訳かい。」
鬼鮫は愛刀、鮫肌を持ち上げて肩に担ぐ。逆立っていた鱗を寝かせて鬼鮫の首筋に擦り寄る様に、鬼鮫は満足そうに鼻を鳴らした。
「これからはどう動くんです?」
「それはアジトに戻ってから話すとしようか。まだボクにはキミに見せるべきものがある。」
カブトはフード越しにトビの顔を見やった。
何も言わず、ただ朽ちた仮面から光る写輪眼を伏せてトビは踵を返した。