第11章 十一朝
暫く恥じている鎖羅の顔を見つめている。
すると、ふと急に表情が翳った。
「……どうしました?」
「…トビさん、どこにも行かないですよね」
一瞬、ドキリと心臓が高鳴る。
次第に潤んでいく瞳に、言葉の続きを求めた。
「夢に見たんです。どこか知らない場所で、私は私じゃない一人の子供で、トビさんをとっても憎んでた…。トビさんは何だかいつもより怖くって、寂しそうで、ぼんやりと、この人は独りなんだって思って……」
目を伏せ、言葉を詰まらせる。
鎖羅の肩がトビの胸元で微かに震えていた。
「こんな仕事ですし、憎まれることなんて普通じゃないッスか」
「トビさんだけが憎まれるだなんて、そんなの、おかしいです」
「………」
ぽろぽろと泣き出した鎖羅をトビは抱きしめる。そうすると、鎖羅は糸が切れた様に潜めた声で慟哭した。
「トビさん、ッ、どこにも、行かないで…!世界の全員が憎んでもっ、私は、わたしはッ…!」
「………行かないッスよ」
薄暗い部屋は鎖羅の泣き声のみが微かに響いている。