第10章 早暁
長きに続いた対暁との戦いは終わり、木の葉は朝を迎える。
即興で建てられた簡易的な火影の執務室では、鎖羅が松葉杖を壁にかけ、椅子に座っていた。その横には、うちはイタチ。早急に里から出してもらいたい彼の望みではあるが、そう簡単に叶わないことはよく分かっていた。
「傷の具合はどうだ?鎖羅」
「火影様のおかげでだいぶ良くなりました」
「そうか」
綱手は机上の書類と、一冊の小さな本を取りだした。交互に目を配り、なにやら読み合わせている。
「お前がこの里に来た時から、夢見の里について秘密裏に調査を進めていた。結果によれば、里が滅んだ最大の原因として禁術が挙げられる。………そして、一夜にして滅ぼしたのはお前ではなく、里長の直近によるクーデターであることも分かった。」
「……!」
「この事実を今度の査問会で重要証拠として提出する。お前の犯罪歴は取り消し、かつ自らの里を命を懸けて守った者として、夢見一族の名誉回復を上役へ働きかけよう。」
「ありがとうございます…!」
「そして…イタチ。」
綱手は厳しい目でイタチを見やる。
「ダンゾウの死により、三代目が隠し通してきたあの夜の真実が明るみに出た。かつての木の葉の落ち度によってお前に辛い道を歩ませたこと……火影を代表して、謝罪させてほしい。」
「頭を上げてください、五代目様。」
イタチは綱手を諌める。その表情は至極穏やかであった。
「もう終わったことです。それに、俺達一族が密かに反逆を企てていたのは事実。三代目の英断がなければ、今頃うちはを筆頭に戦争が始まっていたはずです。」
「………うちはイタチ、お前は聡明な男だ。私としても、何とか誤解を解いてやりたい。だが……」
「五代目様、それなら提案してもいいでしょうか。」
イタチは鎖羅と顔を見合わせ、笑う。
その様子を綱手は不思議そうにして席へ戻った。