第24章 〜番外編その1 〜
それから、仰向けになると
天井を見つめながら
『運命か・・・私にもいるのかな
そんな相手・・・』
そうポツリと呟いた。
天井を眺めてはいるけれど
浮かんでくるのは信長の顔。
(連絡先か?ジャケット返してもらう為だよね?
でも、徳永さん経由でもよかったのに、なんで?
また、私と会うのが嫌じゃないってこと・・・)
桜奈と家康の逆転劇をおこした
運命のように、自分にもそんなことが
起きてくれないだろうか。
そう願い、期待している自分に気づいた詩織。
でも、すぐに常識に打ち消されてしまう。
(そんなことあるわけないか。
あんなにもう一度会いたいって思ってた
再会は、最悪だったし・・
偶然の二度目だって、目の前でコーラ吹いて
Tシャツは、デロデロだし・・・
あっちは大人で、お医者さんで・・
こっちはただの小娘で・・ハハッ
絶対ないわ・・ありえない・・)
自分でそう考えながら、落ち込んでいく詩織。
世間の一般常識と言う観点に
容赦なく、否定されていく
自分のほのかな恋心。
傷つく恋心を必死に守るかのように
小さくうずくまる詩織。
届きそうにも、相手にもされそうにない
自分の想いが可愛そうに思えた。
その想いは、小学生の頃から
後生大事にしまってきたものとは
すでに形は変わっていた。
会いたいと、ただ思っていただけの再会前。
でも今は、ずっと、ずっと、欲がでる。
ただ会うだけでは、もう足りなくなっていのだ。
私を見て欲しい
私を知って欲しい。
信長をもっと知りたい。
信長にもっと近づきたい。
(でも、あれを返したら
もう関係なくなるんだよね・・・)
壁にかけられてた、信長と自分を
繋ぐ、唯一のもの。
最後になるかも知れない
会える理由が、消えてしまうと思うと
何故か、ジャケットを返したくない気分に
なってしまう詩織だった。