第4章 〜初恋〜
『近くで、泳いでた、知らないお兄さんが
しぃちゃんが溺れてるのに、気づいて
助けてくれたんだよ。』
『そう、そう、そのお兄さん!
パニックだから、そのお兄さんにしがみつ
きながら、自分が上に上がろうって
もがいて、暴れてたんだよ。
そしたら、そのお兄さんがさ、ぎゅーって
後ろから抱きしめてくれて、大丈夫!
絶対に助けるから、落ちついて
力抜いてって、声かけてくれて
それで、少し安心してお兄さんに
身を任せられた。その後、ちゃんと
お礼も言えないまま、お兄さん
消えちゃってさ。』詩織。
『あの時は、本当に怖かったよ。』
と桜奈。
『だよねー。
私も凄く怖かった。その分、その時のことが
印象深くて海で助けてもらった
お兄さんの顔と抱きしめてもらった感覚が
未だに鮮明でさ。
私には、命の恩人で特別な人なんだよ
そのお兄さんは。たぶん、それが私の初恋。
そのお兄さん、すっごいイケメンだったから
イケメン見つけては、あっ、あの人じゃない
って感じで桜奈じゃないけど
ずっとどっかで探してたんだよ。
会える訳でも、そんな当てもないし
遠い記憶過ぎて、あれは夢だったかもって
錯覚したくなるほど昔なのにさ
今だに消えないんだよね
もう一回だけ、会いたいって気持ちが・・・』
遠くを見つめ、憂いをおびる詩織の
表情に桜奈は、ドキッとした。