第22章 〜ただ一人の人〜
全てにけじめをつけ、気持ちをリセットし
真っ新な、ただ桜奈だけを想える
自分になって、もう一度桜奈に
向き合いたい。
その時が来た時、桜奈が手の届かない
存在になっていたとしても
二度会う事がかなわないとしても
それが、自分に与えられた試練だとしても
何度、生まれ変わろうと
また、必ず桜奈をみつけて好きになる。
きっと、それが自分が選び、望み、魂に刻んだ
宿命のはず・・・そう、断言できるくらい
桜奈しか要らないと思う自分がいる。
激しく求め合いながら、けれど
進む時間に引き剥がされる二人。
桜奈の顔を優しい顔をして覗きこみ
止めどなく溢れる涙をそっと拭う家康。
そんな家康をみて、苦しそうに、眉をひそめ
切なさが込み上げる桜奈。
(ダメ、こんな顔でサヨナラしたくない。
決めたでしょ!家康さんの幸せを願って
笑顔でお別れするんだって!・・・)
涙を拭い、気持ちを落ち着かせ
意志の強さが宿る瞳で
真っ直ぐ家康を見つめ
『こちらこそ、ありがとうございました!
私は、大丈夫です。絶対、幸せになってみせます
だから、家康さんも、ちゃんとちゃんと
幸せになって下さい!約束ですよ!』
そう言って、渾身の力で微笑む桜奈。
『じゃ、帰りますね。お元気で・・・』
にっこりと笑う笑顔はすぐに歪み
切なさでいっぱいになった。
『うん、元気で・・・』
そう言うのが精一杯で
ドアを開けて出ていく桜奈をなす術なく
見送る家康。
ドアがパタンと締まる。
家康は、力なくその場に立ち尽くし
光の消えた瞳で、時が止まったように
桜奈が出ていったドアをただ眺めていた。