第22章 〜ただ一人の人〜
部屋のドアをパタンと締めた桜奈。
そのまま、ドアにもたれながら
ズルズルと座り込んだ。
(分かっていたはずななに・・・
分かっていたはずなのに・・・)
声にならない嗚咽とともに
溢れてくる涙と、家康への恋心。
家康の気持ちを、知らなければ
きっと、ただの片思いで終われたのかも
知れない。
けれど、好きだと言われたことで
抑えていた気持ちを止められなくなった。
家康の幸せを願う99%は
自分の為に残した1%にあっと言う間に
呑まれ、自分の中で暴れ出す。
生まれてはじめて感じる
ドロドロした感情。
婚約者である、小夏が羨ましくて
羨ましくて、仕方なかった。
どうして、私ではダメなの?
どうして・・・!!
自分の苦しさに呑まれた桜奈には
何も見えなくなっていた。
婚約の経緯も家康の気持ちも
知っているのに、わかっているのに
相手をら慮る余裕などなくなっていた。
苦しさに、身悶えし、やるせない気持ちに
胸が潰れそうな痛みを抱えて
ただ、ただ、涙を流す桜奈。
どれくらい、そうしていたのだろう。
疲れ果て、重い身体を引きずるように
しながら桜奈は、ベッドに
倒れ込んだ。
泣き腫らし、光のない虚ろな瞳で
壁を眺めいた。