第21章 また、恋してくれますか。
『桜奈・・・ごめ・・』
と言いかけ家康の言葉を遮る桜奈。
家康の両腕の服を握りしめると
『だから!・・だから、家康さんも
ちゃんと幸せになって下さい!
小夏さんを幸せにするんじゃなくて
ちゃんと二人で幸せになって下さい
お願いします』
俯いたまま、床にポタポタと落ちて行く
涙の滴。
『私は、家康さんに好きなってもらえた
それだけで、もう十分です。
出会ってくれて、私に恋してくれて
ありがとうございました』と深々と頭を下げ
涙を拭いながら、家康の横をすりぬけ
階段を駆け上がり、自室に戻って行った。
追いすがり、抱き寄せることは
出来なかった家康。
想いを告げれば、今の関係が
終わることは予測していた。
どちらにしても、終わるのなら
ただ、桜奈に自分の気持ちを
知って欲しかった。
残された食器を淡々と片付けながら
家康は、終わってしまったのだと
身に染みて感じながら
(両想いなのに・・・振られたか・・・)
桜奈の言った言葉を、心の中で
復唱してみた。
(俺は、振ってないよ、桜奈。
でも、待っててなんて、言えないじゃん・・
待ってなくていい、俺は小夏の幸せを
見届けたら、必ず迎えに行く。必ず・・。
その時に、桜奈の気持ちが俺になかったら
本当の意味で振られるのは、俺の方か・・ハハ)
必ず迎えに行くと、心で誓った言葉に
家康は、はっと気づいた。
(なんだよ、光秀さんも人が悪いな
最初から、小夏を手放すつもりなんて
これっぽっちもなかったのかよ・・・)
そう、確信したのだった。