第1章 〜幸せだった?〜
しかし、御殿に戻ると家臣達が血相を
変えて家康を迎えた。
『殿、大変でございます。信康様の
ご容体が急に悪化し!早く、早く、診て
さし上げて下さい。』焦る家臣達。
『・・・っ!!』
血の気の引く思いで信康の
部屋へと走り出した。
部屋の襖を勢いよく開けると
桜奈が青ざめた顔で
家康をみた。
『家康様、半刻程前から、今まで以上に
熱が上がりだして、息が苦しそうなのです。
熱冷ましのお薬も効かず、熱が全く
下がらないのです。早く信康を診て
やって下さい。お願いします』
涙を浮かべ懇願する桜奈。
『信康!!』と、駆け寄り
診察を始めた家康だったが
信康は、既に肺炎を併発していた。
信康の胸の音を聞いて家康には
すぐに分かった。
朦朧とし汗びっしょりで
『ハッー、ハッー』と苦しげな
呼吸の信康。
このまま、熱が下がらなければ
命取りになる、家康の心は
底知れぬ不安に覆われていく。