第20章 〜それぞれの道〜
千里に呼ばれて
桜奈の部屋に通された栞。
『うわー、桜奈の部屋って家康だらけね』
と驚いた。
『そうなのよ。栞の事を毎晩、お伽話みたいに
して聞かせててね。そしたら、徳川家康の
奥さんと自分が同じ名前ってことに何かの
スイッチがはいったみたいでそれからは
気分はすっかり、徳川家康の奥さんみたいよ。
家康への愛が止まらないんですって・・』
と、クスクスと笑い
『こっちの家康君の引越しが20日だから
その後、そっちに自分の部屋に
戻ってもらう予定でいるわ。
その間だけ、姉妹水入らずで向こうの
話してあげて。特に徳川家康の話をね。
きっとあの子は大喜びすると思うから・・・
じゃ、今はゆっくりお昼寝しなさい。』
『うん。じゃ遠慮なく。にしても
家康への愛が止まらないのが分かるわー』
と、部屋をぐるっと見回し微笑む栞。
『でしょ?困ったものよ・・
じゃ、私はお夕飯の買い物に行って
くるわね。』と千里は部屋を後にした。
桜奈の部屋に飾られてある
家康グッズの数々に
『ほんとに好きなんだねー
まるで、桜奈さんじゃない』
多少違っても容姿も雰囲気も家康好きも
そっくりなのに、でも戦国時代の桜奈
ではないのかとどこか寂しくなる栞。
『家康君も家康にしか見えないんだけどな・・
私には、そう見えるってことなのかしら?
信長君も信長様に似てる気がするし・・』
不思議でならなかったが
元来、天使爛漫で素直な性格。
(同じ名前だから、顔が似て見えるだけ?
あー、でも私なら、あり得る。
否定しきれない、自分が悲しいわ・・・)
と、自分が単純な人間だからと
そう思うことにした。