第17章 〜他生〜
『ほ、ほんとに・・あー』と言って
頭を抱えた詩織は突然『やっぱ、無理!!』と
くるっと身を翻し、来た道を戻ろうする。
今度は詩織の手を咄嗟に掴み
『何言ってんの、しぃちゃん!
おばあちゃんの付き添いで来たんでしょ?
おばあちゃん、1人だけにして
帰るわけ行かないでしょ!!』と
桜奈に引き留められ
『あっ、そうだった。テンパリ過ぎて
一瞬、忘れてたよ』と、もはや、挙動不振の
域に達している詩織。
『しぃちゃん、しっかりしてよ』と言うと
詩織の耳元に顔を近づけて
『何も、告白しにいくわけじゃないよ。
ほんの一瞬、チラッと見るだけ。もしかしたら
それすら、今日は出来ないかもしれない。
会う約束なんてしてないんだから』と
家康に気取られないようヒソヒソと小声で
話して聞かせる桜奈。
『ね、大丈夫。それに小田先生言ってたよ
助けたことを気にさせてたなら
返って申し訳なかったって伝えてって。
そんな風に気遣って、優しいことばを
サラッと言えちゃう凄く素敵な人だったよ。
めちゃめちゃ紳士だったし、しぃちゃんが
言ってた通りイケメンさんだったよ!』
とニッコリする桜奈。
桜奈の話を横で聞きながら
(あーあ、まんまと騙されちゃってるし)と
やや呆れ顔の家康だったが
詩織の様子だと、このまま迷って
桜奈との押し問答が続くような
気がした。
病み上がりで炎天下の中、話を続ける桜奈の
体調が心配になり見兼ねた家康は
話に割って入った。
『小野寺さん、悪りぃ。
この人病み上がりだし、このまま炎天下で
話続けるのはちょっと心配なんだけど』