第15章 〜再会〜
悪戯っ子のように、家康が眠っている隙に
寝顔を観察しては、新た発見にときめき
ながら、心の中でキャッキャする桜奈。
そんな自分が可笑しくて、クスクスしてしまう。
そして、(でも、片想いだけどね・・・)と
心の中でぽつりと呟いた。
好きになった後に、好きになってはダメな
人だったと分かっても手遅れだった。
無理矢理、自分の気持ちを無視してみたり
閉じ込めようとすれば、するほど想いは
返って止められなかった。
こんなに近くにいるのに、届かない
届けてはいけない想い。
運命でもなければ、恋愛対象ですらないと
分かっても、消えない気持ち。
自分の気持ちのはずなのに、本当に
何一つコントロール出来ず、家康の態度に言葉に
一喜一憂して上がったり、下がったり
らしくない自分に振り回されてばかり。
ロミオとジュリエットも、舞姫も
お互い、想いが通じ合い、愛し合いながら
それでも一緒にはなれなかった。
でも、私のは違う。
私が勝手に好きになり、勝手に想っているだけ。
だから悲恋でもなんでもない。
ただの片想い。
ケーキバイキングに行った日。
自分の一方通行の想いは、どう逆立ちしたって
一方通行のままなのだと、はっきり自覚した。
事実上の失恋。でも気持ちは、はいそうですかと
切り替えなどできるはずもなかった。
諦めよう、忘れようと、無かったことにしよう
いくら自分を宥め、説得し、思い直そうとしても
結局、切り替えなんてできなかった。