第13章 〜真実〜
光成に見送られ、笑顔で手を振りながら
桜奈は改札を抜け
雑踏に消えていった。
(きっと、徳永さんのこと気になってた
だろうに、気にする素振りもせずに
僕に付き合ってくれてけど・・・同居してるなら
嫌でも顔わあわすことになるし
大丈夫かな・・・上杉さん・・・)
電車に乗り、一人になった桜奈は
目の当たりにした、現実に
打ちのめされていた。
油断したら、泣いてしまいそうな
気持ちを堪えながら、入り口のドア付近に
もたれるように身を預け、次々に流れて行く
車窓からの景色をボーッと眺めていた。
(岩田君がいなかったら、逃げ出してたかも・・・
きっと、凄い顔に出てたよね。
勇気出して告白してくれたのに断った挙げ句
動揺して、徳永さんが好きだってバレて・・・
はっー、岩田君にも申し訳ないことしたな・・)
自分が好きな人には、別に好きな人がいる。
その事実に、今まさに傷つき落ち込んでる
自分の痛みは、そのまま光成に自分が
与えてしまった痛みでもあったはず
そう思うと光成に申し訳なかった。
そして、同時に家康と小夏の仲睦まじい姿
を思い出し胸がギュッとなった。
痛む胸を鷲掴みにするように無意識に
洋服を握りしめていた。