第11章 〜別れ〜
(あっー、こう言う時の小夏、ほんと嫌だ)
と頭を抱えた。
いつも、冷静に人を観察し、分析するのは
幼い頃から小夏は長けていた。
それだけに、家康は、小夏に
隠し事が隠し通せた事が無かった。
見透かされてしまう不安で
桜奈を意識し始めてから
会いに来るのが、怖かったのだ。
『桜奈・・・上杉桜奈だよ。
いま、高2の子』とボソッと呟くように
話す家康。
『ふーん、名前で呼びあってるの?』
と、また、ギクッとする質問をしてきた。
『えっ、まさか、何で?』と焦る家康。
『だって、普通は、上杉桜奈さん
って、距離感あると呼び捨てしない
じゃない家康。必ず『さん』付するから』
と、ニヤニヤが止まらない小夏。
『べ、別に深い意味はないよ』と
名前呼びしてることには答えなかった。
(あら、残念。誤魔化されちゃった。
まぁ、家康が、少なからず意識してる
のは分かったから、今日はこれくらいで
勘弁してやるか、相手の子は
どう思ってるんだろ?知りたーい!)
と、ご機嫌の小夏。
一方で、数年分の寿命が縮まったように
背中に嫌な汗をかいて、どっと疲れた家康。
『あら、家康、何か疲れた顔してるわね!
買い物の後、夕飯でもって思ったけど
今日は、ここでお開きにしましょうか?』と
小夏が言った。
(誰のせいだよ!でも正直、助かった)と
ホッとしていると、すかさず
『今、ホッとしてるでしょ?』とすぐバレた。
(もう、この人ほんとに、やだっ)
『別に、そ、そんなんじゃないよ』と
慌てて反論したが、誤魔化しきれていない
ことは、長い付き合いの二人には
暗黙の了解のうちに伝わってしまうのだった。