第11章 〜別れ〜
一方、桜奈と詩織を見送った
政宗と愛花は、『いい子達を見つけたね政宗。
政宗のタイプは、上杉さんの方でしょ?』と
揶揄った。
『あっ、やっぱ分かる?可愛いよね
桜奈ちゃん。詩織ちゃんもかなりの
美人さんだし、二人目当ての客増えるかもよー』
と、冗談を言う政宗。
『確かにー!でも、本気で狙ってるなら
泣かせるんじゃないわよ!そんな態度は
私が許さないけどね!』
と言って店内に戻る愛花。
後ろからついて行きながら
『わかってるよ!』と言った政宗の表情は
少し曇った。
(どうせ、俺は、いつまで経っても
弟みたいなもんとしか、映らないんだよなぁ
愛花にはさ・・・いっそ諦めてしまえたら
楽なんだろうにな。)
ため息混じりで、頭を掻きながら
店内に戻る愛花を見つめる政宗だった。
生まれた時からの幼馴染。
姉のような存在がいつしか憧れの存在に
なって行った。
愚直なまでの、スイーツに対するこだわりと
努力を間近でずっと見つめてきた政宗。
それに釣られるように、自分も料理の世界に
のめり込んでいった。
愛花がいなければ、今の自分も
将来の展望も無かったかも知れない。
政宗にとって愛花は、尊敬する人であり
特別な存在だった。
歳の差などなど気にしていないつもりの
政宗だったが、いつまで経っても弟的存在から
抜け出せず、全く意識すらしてもらえない
自分を歯痒く感じていた。
愛花にとって一番大事なものが夢であり
仕事であり、恋愛に全く興味がないことは
愛花をずっと見てきた政宗には痛いほど
分かっていただけに複雑な思いだった。