第9章 〜秘密〜
(まただ・・無理に笑ってる?
でも、俺がこの子と距離を取るためにも
話てもいいのかもしれない。
聞けばこの子はきっと、俺と距離を取る。
無防備で無自覚だけど、たぶん強い意志の
持ち主だから、小夏の事を話したらもう・・
好きになる対象として、絶対俺を見ないだろう。
そしたら俺も気持ちに整理がつくはず。
そして、いずれ会わなくなれば
この気持ちも自然と、忘れていくよ・・・)
そう自分に言い聞かせ
桜奈の側にいながら
桜奈にとっては、1番遠い存在に
なるであろう自分を想像すると
胸が締め付けられるように
痛み、苦しくなっていく家康。
ぐっと握り拳に力を入れ話す覚悟を決め
不安な顔で自分をみる桜奈にニコッと
笑いかけると
『うん、人に色々詮索されるのは
好きじゃないから、聞かれたことにだけ
答えてたんだよ。今の電話の相手は
彼女ではないよ。』
(彼女ではない?じゃ、やっぱり好きな人?)
桜奈は、自分が尋ねておきながら
(やっぱり聞きたくない!!)そう、思い
耳を塞いでしまいたくなった。
そして、家康から出た言葉は
『小夏は俺の、婚約者だよ。』
その瞬間、風が、ぶぁーっと吹き抜け
桜奈の長い髪がたなびき
顔にかかった。
まるで、驚愕し何を言われたのか
理解できないでいる桜奈の表情を
隠してあげると言っているように。