第9章 〜秘密〜
『政宗さん?も同じ医学部
なんですか?』と詩織。
『いや、あいつは、経済学部だよ。
将来は、親父さんの会社を継ぐことに
なるだろうからね』と家康。
『政宗さんのお父さんって、社長さん
なんですか?』と桜奈が聞くと
家康は、ピクッと眉をひそめた。
『まぁ、あんたにしたら、確かに
将来有望株の部類かな。しかもこの店の
オーナーの息子だし、いわゆる御曹司って
やつだよ・・・気になるなら紹介しようか?
あんたの好きな、将来安泰な申し分ない
相手じゃない?』
(何だよ、名前で呼べって言われたら
あっさり、下の名前で呼ぶんだな・・・
俺のことは、いつも苗字でしか呼ばないくせに)
チクチクと棘を含ませ話す家康。
全ては、桜奈が『政宗』と
呼んだことへのイラつきからだった。
『えっ?そうなの!ほんとに!』
食いついたのは、詩織の方だった。
『桜奈凄い!もしかして、玉の輿に
乗れるかもよ!政宗さんもさっき桜奈に
興味示してたじゃん!紹介してもらえば?』
と、家康の棘を悉く、逆手にとり
(徳永さんって、イラッとすると意地悪な
物言いする捻くれ者なんだな。)
と詩織は思い、そんな返しをしたのだ。
『何言ってんのよ、しぃちゃん。
冗談に決まってるでしょ。
徳永さんも、やめて下さい。
私が思ってる将来有望株の
意味と違いますから!』と焦り
二人で自分を揶揄っていると
桜奈は受けとった。
好きな相手から、別の人を紹介すると
言われ、揶揄いだと受けとったが
それでも、家康から自分には興味がない
と言われているようで、寂しくなった。