第1章 〜幸せだった?〜
悲しげな顔で桜奈を見つめた家康は
桜奈の肩に手を置き
『分かったよ・・桜奈には敵わないよ・・』
『ごめんなさい。わがままを言って
家康様を傷つけて、本当にごめんなさい』と
家康を見上げ桜奈はまた
ポロポロと涙を流す。
『桜奈は変わらないな。
頑固で泣き虫で、負けず嫌いで
いつも俺のことばっかり考えてくれる
可愛いお姫様のままだよ。
そんな桜奈のお願いなら
叶えるしかないでしょ。』
そう言って、桜奈を抱き寄せると
でもさ、桜奈がお願いしたんだから
側室を迎えても口は聞いてくれるよね?
俺に意地悪しないよね?』と耳打ちし
桜奈を揶揄う家康。
涙をぬぐいながら、クスクスと笑うと
『はい。家康様のお側にいられるだけで
桜奈は幸せですから』と微笑む桜奈。
(こんな願い桜奈の方が、俺より
ずっと辛いくせに・・・
ごめん桜奈、それでも俺は桜奈を
手離すことなんて、できない・・)
愛おしさが溢れる家康は、桜奈を
膝に乗せ、きつく抱きしめた。
『ごめんなさい、家康様・・・』
『もう、わかったから・・俺の方こそごめん。
こんな辛い願いごとさせて・・。俺を
徳川家を想ってくれて、ありがとう、桜奈』
二人は、微笑み見つめ合うと
どちらからともなく唇を重ねた。
お互いの心を、確かめ合うように
肌を重ね合わせ、その温もりに身を委ねた。