第8章 〜恋敵〜
一緒に過ごし、桜奈の人間性に
触れる度に、もっと桜奈との
距離を、縮めたい、近づきたいという衝動と
たとえ、自分が好きになったとしても
手に入れることの叶わない人どころか
それを願うことも許されない自分だと
言う戒めにも似た思いの狭間で
揺れている自分を持て余している
と言う方が正しかった。
この気持ちは、自分の奥深くに封印し
できるだけ早く桜奈とは離れ
そして、忘れよう。
自分の自制が効くうちに。
家康は、図書館で光成と桜奈の
微笑み合う姿を見ながら、そう思い
今また、イライラしている自分に
そう言い聞かせるしかなかった。
気づかれないように、ゆっくり息を吐き
気持ちを鎮め、またいつもの
淡々とした自分へと戻る家康だった。