第8章 〜恋敵〜
『そうだね!』とご機嫌の桜奈。
桜奈の頭の中には、パンケーキが
食べられる楽しみしか無かった。
一方、家康の方は、自分が今日一日
イライラし、光成と別れやっと
落ち着いたにも関わらず、政宗と桜奈
のやりとりに再び、イライラする自分を
持て余していた。
(俺には、関係無いはずなのに
無性にイラッとする、調子が狂う・・・
いちいち気になる、目に入ってくる。
はー、何やってんだよ、俺は。)
家康がそう思うのは、当然なのだった。
家康には将来を約束した人が既にいるからだ。
約束するより他に彼女を救えるとは
思わなかった。だから自らそれを望んだ。
そのはずだった・・・
そんな自分が、まさか誰かに惹かれるなど
あってはならない。
初めて桜奈と出会った日の衝撃は
確かに今でも、不意に込み上げてきてしまう。
やっと、やっと巡り会えたと、今すぐにでも
抱きしめたい衝動。
自分のそんな想いに驚き、ありえないと否定
したはずだった。
すれ違っただけの、もう二度会うことも
ないだろう子に、一目惚れしてしまった
自分が不思議でならなかった。
可愛かったから、タイプだったから
ほんの少しだけ生じた気の迷い、勘違い
そう思うことで、やり過ごしていた。
まさか、お世話になる先でまた会うなどと
思ってもいなかった。
そして、ブレーキがどんどん効かなく
なって行く自分と戦っていた。