第8章 〜恋敵〜
図書館に着いたばかりの時は
桜奈を取り合う、ライバル同士の
火花が見れる、昼ドラみたい♪と
ワクワクしていた詩織。
けれど、光成の切ない表情をみて
想いが届かない切なさと自分に
振り向いてもらえない苦しさは
ずっと忘れられず、想いも捨てられず
にいる自分の想いと重なった。
(目の当たりにしたら、やっぱり
キツイよね・・・岩田君の片想いだって
もう、1年以上だよね。あんたも罪作りな
女だねー桜奈。)と桜奈を
ため息混じりに見つめる詩織。
当の桜奈だけは、それぞれの
心中に渦巻く想いなど、我関せずと
ばかりに、勉強会を楽しんでいた。
その、素直で真っ直ぐな純粋さが
桜奈の本質。
柔和な外見からは、想像もつかないほど
鋼のような強い意志を秘めている。
一度放たれた矢は
脇目も振らず、的へと向かうように
真っ直ぐにただ一途に想い続ける
桜奈の恋愛はきっとそんな
感じなのだろう。
だからこそ、その的になれなければ
想いが重なり合うことも
桜奈の瞳の中に自分が映ることも
ないだろう。
それが、光成が1年以上の片想いを通して
見てきた桜奈の姿だった。
『岩田君、大丈夫?』不意に桜奈に
声を、かけられハッとする光成。
『ああ、ごめん、ちょっとボーっしてた』と
慌てて取り繕った。