第91章 Overflowing feeling
酔っていた…口が滑ってしまう
それぞれのうちで宅飲みしたり飲み直したりする時間が楽しかった
つい言ってしまう
ビールに口をつけていたヒロくんがダンッとテーブルに乱暴に置いた
「ヒロくん?」
「お前が女で俺たちは男だ
軽々しくそういうこと言うな」
怒ってる…
「俺は、お前が好きだ
そんな風に言われたら…」
男の顔をした
驚いている
彼女の顔の横に手をついた
「ほら、俺が怖いんだろ?」
必死に顔を横に振る
でも、手は震えてて…
うるうるさせた目で俺をみる
「俺は…、幼なじみのお兄ちゃんに戻りたくない
一緒にいると近づきたくなる
近づくとキスしたい
キスすれば抱きたいって思ってるんだ」
「お前と一緒にいられない…どうにかなりそうだ…」
黙り込んでしまったを残して俺は部屋を出た
やっちまったなぁとは思った
でも、があまりにもかわいくて無防備だから…
これで嫌われてしまったかもなぁとぼんやりしながら思った
「なぁ、ちゃんは?」
「さぁな…松田に聞けば?」
「陣平ちゃん、今日は非番なの
そういう日のお昼は必ずこの辺にいるんだけど、どこにもいないんだよなー」
避けられてるのか…
まぁ当然と言えば当然
あんなふうに付き合ってもいない男から、おもむろに抱きたいなんて言われたら引くよな…
「なぁに、喧嘩でもした?」
「萩原はほんとこういうことには敏感だよなー」
「でしょ?研二さまが人肌脱いであげようか?」
「いいよ、俺とは少し距離取った方がいい
ダメなんだよ、俺…
といると触れたくなる」
キョトンとした萩原はそのあと爆笑した
「そっかぁ、景光くんは好きが溢れちゃったのかー、そっか、そっか」
「うるせーよ」
頭をグリグリされて思いっきりからかってくる
「萩原、頼むから…ニヤニヤすんの辞めて…」
ごめん、ごめんと軽口で謝る萩原は機動隊とは反対の方向へ向かって歩き出す
の所に行くんだろうな
ほっといてくれてもいいのに、ほっとけないのは萩原の性分なのかもしれない
でも、本気で踏み込んで来て欲しくない場所は踏み込んで来ない
見守る事もできるやつだ
「適わないなぁ」
風見さんの雷が落ちる前に仕事に戻ろうと俺も公安へ戻った