第90章 Master
「すみません、さん
お呼び立てして…」
「いえ、逆に助かりました」
「なんです?」
「こっちの話です」
へへへと笑う私の手に巻かれた包帯を沖矢さんは凝視した
怪我の理由を聞かれて、長野での出来事を話す
「それは、みなさんご立腹なのもわかります」
「え、でも…みんな過保護すぎですよ」
心配してくれるのもわかる
でも…あの書類を守らなきゃと強く思った
拳銃を横流しした人物、受け取った人物
芋ずる式にみんな逮捕されたらしい
困った様に笑う沖矢さん
「もっと自分を大切にしてください」
ギュッと優しく抱きしめてくれた
一瞬、身体がこわばってしまう
「どうかされましたか?」
異変を素早くキャッチするのはさすがだ
「あの…ビックリしたのと…
男の人にこうされるのも、久しぶりで…」
「以前はところ構わず、松田くんや諸伏がしていたと思いますが…」
ところ構わずって…
「記憶戻ってから…かな
そういうことはないですよ…」
ふむと顎に手を当てて、考えことをしている沖矢さん
「皆さん、臆病になったものですね」
「と、言いますと?」
「さんが、大切なんですよ
怖がらせたくないって思ってるんだと思います」