第86章 Overflowing feelings
「ふーん、お前のボーッとしてる原因はあいつか…」
松田さんが見ていたみたいで、諸伏さんと入れ替わりに自販機に向かい合う
さっきより少し不機嫌で、背中が怒っていると伝えてくる
「行かないでくれ、なんて俺には言えないよな…」
「え…それは…」
こちらを向いた
「俺ともデートしようぜ」
「へ?」
耳まで赤くして小さな声で呟く
「諸伏への返事は俺とデートしてからにしてくれよ」
なんの返事なんだろう…分からなくて困っていると、早く仕事終わらせねぇと諸伏が待ちぼうけくらうぞと背中を押された
松田さん言われるがままに仕事を片付けて時計を見ると19時を少し回った所で、急いで諸伏さんに電話をかけた
「思ったより早かったな、駐車場で待ってるから…
慌てなくていいからな」
「わかりました」
諸伏さんの車に近づくと、降りてきて助手席のドアを開けてくれた
「あ、りがとう…ございます…」
「どういたしまして」
行こうかと車を発進させるといつも行く居酒屋ではなくて、オシャレなレストランに連れてきてくれた
落ち着いた内装に薄暗い店内、BGMも好みの曲で初めて来た所だけど、ゆっくりできるいいお店だった
「何食べる?」
「諸伏さんは?」
諸伏さんが頼んだものと同じものを注文する
車の中でもそんなに喋らなかった
また訪れる沈黙…
この沈黙に押しつぶされそうだった
運ばれてきた料理に目を奪われる
いただきますと2人で手を合わせて、一口
「美味しい!」
思わず笑顔になってしまう